米アップルが圧倒的な力関係を背景に日本の企業から部品の製造に関する知的財産権を無償で提供させていたを疑いがあるとして、公正取引委員会は調査に乗り出しました。公正取引委員会は昨秋も調査を行い、アップルの知的財産権の不当な吸い上げを確認しています。
米アップルと部品供給契約を結ぶ複数の日本企業は、公正取引委員会の調査によって部品製造に関する技術や知識を無償で提供させる一方的な契約を結ばされていたことが判明したと6日(2019年8月6日)に報じられています。
毎日新聞によると、日本企業側が知的財産権の侵害に当たるとして契約の修正を求めたところ、アップルは取引関係の解消を持ちだして押し通したとの訴えもあったとしています。
公正取引委員会は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる可能性があるとしていて、事実確認や追加の調査が必要かを検討しています。
実際に製造業の現場で大企業が下請けの中小企業の知的財産を不当に吸い上げる事例がないかを調べるため、公正取引委員会は昨秋、国内の中小企業を中心とした約3万社にアンケートを実施しました。
この件について関係者は、スマートフォンの電子部品などを製造する企業約10社がアップルの名前を挙げ、「知的財産権を侵害する可能性のある契約を一方的に結ばされた」などと回答していました。
具体的には、商談を進めている最中にアップル側の秘密は厳格に守るよう言われる一方で、日本企業が開示した技術はアップル側が「無償で他のビジネスに利用できる」などという一方的な契約を結ばされる事例があったと言います。
このような知的財産権を無償で提供させる一方的な契約を結びながら、アップル側から技術が他の企業に流出した場合、価格競争に陥ったり別の企業に供給元を変更されたりと、部品供給元の日本企業の不利益になりかねません。
公正取引委員会に訴えた部品供給元には大企業も含まれていると言います。独占禁止法違反では、強い立場を利用して下請け企業に不利益を与える「優越的地位の乱用」を禁じていますが、こうした行為に当たるかどうか慎重に調べるとしています。
昨年の2018年7月には、公正取引委員会はアップルと3キャリアとの契約関係間にあった、独占禁止法違反の恐れが解消したと発表しました。
そもそもこの業界には「アップルとキャリアの間にはアップルが有利な契約が存在するのではないか」というような噂がありました。
その噂の内容とは「アップルからキャリアに対して膨大な販売ノルマがある」「iPhone専用のプランを作るように強要されている」というようなものです。
そこで公正取引委員会は2年ほど前からアップルとキャリアとの間の契約関係を審査していましたが、結局アップルと3キャリアが一部契約を見直したことから「独禁法違反の恐れが解消した」という発表に至りました。
またフランスではアップルと現地キャリアとの不当契約に対して4850万ユーロの罰金が科され、韓国でもiPhone X発売時の強制捜査から続いていた法的紛争につきアップル側から和解が申請されていました。
さらにキャリア以外でもアップルの「優越的地位の乱用」が推測される行いが今なお公正取引委員会の調査の対象となっています。
先日のアップル第3四半期決算発表で前年同期比12%減と発表されたように、iPhoneの売上げが低迷している中、アップルと販売を担当する携帯キャリアとの取引慣行も徐々に是正されているようです。
アップルの売り上げが伸びている間は取引すれば日本企業も売り上げや利益が増えるため、このような不公正な契約が表に出ないことが多かったと言えるでしょう。
実際にこのような報道が出てきたのも、アップルの勢いが止まってきたことと無関係ではないのかもしれません。