2019年05月13日更新
Twitterにみんなの忘れたニュースを自動投稿するBOTが登場!開発者の思いは?
Twitterで話題になった語句を自動的に再投稿する「みんなの忘れたニュースBOT」が注目を集めています。最近のTwitterでは所謂「炎上」が繰り返されていますが、「みんなの忘れたニュースBOT」によって冷静に考え直す機会を作るのが目的とされています。
目次
Twitterにみんなの忘れたニュースBOT登場
日々、膨大な情報が交わされる短文投稿型SNSである「Twitter」は匿名・顕名を問わず、数え切れないほどの意見がユーザーから発信されます。
Twitter JAPANの公表資料によると、2017年10月時点で日本国内のアクティブ利用者数は4,500万人にものぼると言われています。最近は特定の話題について加速度的に非難が集中する、いわゆる「炎上」状態が発生することも珍しくありません。
Twitterで話題になった語句を、時間をおいて再投稿するアカウント「みんなの忘れたニュースBOT」が注目を集めています。「みんなの忘れたニュースBOT」はTwitter上で話題が沈静化し、約1ヵ月がたった語句を自動的に再投稿し紹介しています。
Twitterで急激に出現回数が増えてトレンドになった語句のうち、ネガティブかつ急に話題になり、すぐに消えた語句を自動で識別、30~40日間を目安に出現回数を示したグラフとともに再投稿しています。
みんなの忘れたニュースBOTの投稿文にあるリンクをクリックすると、その語句について盛り上がった当時の検索結果やグラフを表示することができます。
世間が [電気グルーヴ] について話さなくなって38日が経ちました。 https://t.co/1bnNKvJdDX pic.twitter.com/njZjlJSFHe
— みんなの忘れたニュースBOT (@wasureta_news) May 6, 2019
「みんなの忘れたニュースBOT」では「電気グルーヴ」や「映画料金」など話題となった様々なキーワードが自動的に取り上げられています。「世間が話さなくなった内容」とともに、その炎上を示すグラフが自動的に掲載されています。
例えば「電気グルーヴ」だと上記のようなグラフとなっています。ピエール瀧氏が逮捕されたことをきっかけに一気に炎上が拡大している様子がグラフを見るとよく分かるでしょう。
「みんなの忘れたニュースBOT」開発のきっかけ
「みんなの忘れたニュースBOT」を開発したのは、プログラマーの河本健(@kenkawakenkenke)さんです。開発のきっかけは、最近のTwitterにおける「いろんなことに怒って忘れてを繰り返す空気」を疑問に思ったことからだと言います。
河本さんは普段は都内のIT企業で働く傍ら、様々なソフトウェアやハードウェア作品を発表していると言います。みんなの忘れたニュースBOTは、ゴールデンウィーク中に数日ほどで組み上げたそうです。
河本さんは「みんなの忘れたニュースBOT」の開発の理由について次のように説明しています。
「最近、特にTwitterで炎上のサイクルが短くなっているように感じています。話題の中身を深く知ろうとせずに(場合によっては事実が確定するのも待たずに)、叩きやすい相手を叩いて気持ちよくなって忘れ、また別の炎上ネタに飛びつく様が目につくようになりました。」
「このサイクルの速さを可視化し、定期的に目につくようにすれば、新たな炎上ネタを見たときに本当に自分が一言を言うべき話題なのかどうか、少し考えるクセが生まれるのではないかと思って作りました。」
Twitterでは事件や事故だけではなく、広告や商品、作品や著名人の発言などを巡って様々な炎上が日々起こっています。河本さんは「自分が過去に炎上を面白く感じてしまった経験」から、炎上そのものを以下のように分析しています。
「みんなに叩かれている物を一緒に叩くのが、気持ちいいからだと思います。炎上をすぐに忘れるのは、本質的に自分に関係ないものを叩いているからだと思います。」
Twitter炎上とは?
Twitterはインターネットへ接続できる環境であれば、アカウントに鍵をかけていない限り誰でもツイートを確認できます。そのためひとたび注目されると、多くの人がリツイートするためどんどんツイートは拡散されていき、より多くの人が見るようになります。
それが名誉ある内容なら良いですが、批判や悪い意味で注目を集めた場合に事態は一転し「炎上」という状況になるわけです。一般的に炎上とは、ネット上で批判を受け否定的なコメントが殺到するような状況を意味しています。
炎上が起こる場所はTwitterがダントツでトップとなっていて、続いて個人ブログやその他SNSと言います。簡単に投稿でき誰でも閲覧が可能というtwitterの性質が、多くの炎上を発生させる要因となっているのでしょう。
否定的なコメントが集まると、そこに乗っかるように全く関係ない外部の人間が、コメントに対してコメントをするなど一気に加熱します。自分の知らないところでツイート内容が独り歩きし、炎上がどんどん拡大するという形になるのです。
炎上が起こる原因
炎上が起こる原因はとても多くありますが、大きく分けて「事実に対する反応」と「ただの暇つぶし」という2つがあります。
最近よく起こったのはコンビニやファミレスのアルバイト店員が、冷蔵庫に入ったり食材を使って遊んだりする様子を動画で撮影しTwitterに投稿した場合です。
問題行動を起こした店員だけではなくお店全体にも影響が広がり、それは会社や社会全体を巻き込み大騒動に発展し、酷い場合には全国区のニュースで取り上げられ多額の損害賠償を請求されることもあります。
事実に対する炎上はそのような行為を撮影し投稿しなければ炎上する可能性は低いですが、一方で娯楽としての炎上はどこかに他人を批判するネタがないか、常に探してる人が一定数いるため起こるものです。
批判されるような内容でもないのに、激しく批判され拡散され炎上します。特に社会的地位が高いと周囲から認められている人が、ちょっとした失言や行動をとると、娯楽としての炎上は起こりやすくなるでしょう。
当然投稿する側にも注意が必要だと言えますが、閲覧する側も話題の中身を疑問視し、内容を深く知ろうとすることが重要と言えます。炎上ネタに対して簡単に加わろうとせずに疑問を持つことが大切ですね。
炎上の消費に疑問を持つ
河本さんは「みんなの忘れたニュースBOT」の開発について当時の炎上を蒸し返すことが目的ではないと強調しています。その一方で怒りをなくすことが目的ではない、とも説明しています。
実際に「炎上ネタを単に再投稿し再発火する」ということが起きにくいように、文章や語句など選んで構成することに苦心したと言います。自分が怒りに任せて炎上に油を注ぐだけの投稿をしていないか、一呼吸置いて疑問視することを勧めています。
怒りは発想の源
Twiiterや世間で話題となったニュースを振り返ってみると、世間から忘れ去られて風化させてはいけない事件やニュースもありますし、逆に取るに足らない話題にするほどの内容ではなかった場合もあります。
世間の怒りが収まって少し経った後に考え直す機会を与えるのが「みんなの忘れたニュースBOT」開発の理由です。
ニュースの再投稿や経緯のグラフ表示によって、その事件がそもそもどのような問題があって起こったのかを疑問に思い、どうすれば改善できるのか、自分にできることは何か、を議論したり自問自答したりするようになるのが望ましいと言えるでしょう。
河本さんは「丁寧な怒りは発想の源になるので悪いことじゃない」と言います。つまり河本さんが「みんなの忘れたニュースBOT」を開発したきっかけも、怒ってばかりのTwitterに怒りを感じたからです。
ただ単に怒りを消費して満足するのは不毛だと感じ建設的に怒るためのきっかけ作りとしてこのBOTを開発したわけです。
「世の中が怒らず全てに無関心になることを目指しているのではないです。むしろ逆で、怒るのであれば、ただ叩きやすい対象者を叩いて気持ちよくなって終わるのではなく、そもそもどういうシステム的問題があって(事件ならば)そういう事件が起きたのか、どうすれば改善できるのか、自分にできることはなにか、を激しく議論or自問自答するのが望ましいと思っています」
「みんなの忘れたニュースBOT」フォロワー、開始5日間で3万人超
「みんなの忘れたニュースBOT」のフォロワーは、開始5日間で3万人を超え注目度の高さがうかがえます。河村さんは「同じ問題意識を共有している人がこれだけいる、ということが可視化されているのだと解釈しています。嬉しく思います」と語っています。
タイムラインに流れてきた時は、「グラフを眺めてどれぐらい急峻に世間の興味が失せたのか、また元々の炎上の原因となった事柄が結局解決したのか、など少し調べてみてもらいたい」と言います。
河本さんによると、理想としては「みんなの忘れたニュースBOT」のツイートに返信で「その後どうなったか」をまとめて書き込んでくれる人がいると嬉しい。」と言います。
またこのような再投稿によって振り返りを続けた結果、新たな炎上ネタを見たときに「これ一ヶ月後に忘れたニュースbotで出てきそう」と思ってそっとTwitterを閉じたり、落ち着いて本質的な原因や解決を思案するようになったりすると成功と言えるでしょう。
すでに実際に「忘れたニュースBOTに出てきそう」いう書き込みをしている人もTwitter上に何人かいたようです。
河本さんは「みんなの忘れたニュースBOT」のグラフは今のような数日で終わるピークではなく、いずれはなだらかに下がりつつ少しずつポジティブな感情も増えてくるカーブを描くのではないか。」と理想を述べています。
炎上ネタに飛びつき一時的に気持ちよくなって何も解決や発明をしないのでは勿体無いので、炎上の原因となった事柄に対して疑問視し結局解決したかに注目することで新たな面白い発想に結びつけることが大切です。