AppleはIntelのスマホ向け通信モデム事業の「大半」を10億ドルで買収することで合意したことを発表しました。Intelの知的財産や設備などを10億ドルで買収したことで、Appleの社内スマホ向けモデム開発は加速する可能性があります。
Appleは米現地時間7月25日、Intelのスマートフォン向け通信モデム事業の「大半」を10億ドル(約1100億円)で買収することで合意したことを正式に発表しました。
この買収によりAppleはIntelの17000を超える無線技術の特許、設計設備とともに約2200人の従業員を迎えいれることになります。規制当局の審査を経て、買収は2019年第4四半期(9月末まで)に完了予定です。
Intelのスマホ向け通信モデム事業の「大半」を買収合意と称されているのは、買収後もIntelにはモデム開発の余地が残されているからです。ただ、PC、IoT、自動運転車向けというスマホ以外の分野に限られています。
Intelにとっては、競合のQualcomm(クアルコム)に太刀打ちできないスマホ分野はAppleに譲り、今後より伸びしろが見込まれるIoTなどの分野に特化する形で事業を縮小することになるわけです。
Appleのハードウェア技術担当シニアバイスプレジデントのJohny Srouji氏は、新たに優秀なエンジニアが加わり革新的な知的財産を大規模に買収することで、将来の製品開発が促されAppleは今後さらなる差別化を進められるようになると述べています。
Intelの最高経営責任者(CEO)Bob Swan氏は声明で、この買収によって、開発してきた「非常に重要な」知的財産とモデム技術を手放すことなく、スマートフォン以外で利用される5Gの開発に専念できるとしています。
Swan氏は、「ネットワーク事業者、通信機器メーカー、クラウドサービスプロバイダーなどのわれわれの世界中の顧客層のニーズに最も密接に関連する分野となる5Gに全力を注ぐことを楽しみにしている」と述べています。
「iPhone」の現在のモデル(「iPhone XS」「iPhone XS Max」「iPhone XR」)にはIntelのモデムが採用されていますが、以前のiPhoneにはクアルコムの4Gチップが採用されていました。
Appleとクアルコムは長らく知的紛争を抱えていましたが、5Gスマホ向けの通信モデムでクアルコムがほぼ市場を独占するに至って和解が成立し、クアルコムからアップルへの半導体供給契約を結ぶに至りました。
一方、Appleからの採用を最後の望みとしていたIntelは、Appleが和解を発表した直後に、スマホ向けの通信モデム市場からの撤退を発表しています。
Appleはクアルコムとの和解によって当面の通信モデム供給の問題は解決されていますが、今回あえてIntelから通信モデム事業買収合意に至った狙いは、この技術を中長期的には内製化することで供給問題の根本解決を意図しているとされています。
Appleは特許侵害で競合他社を提訴している華為技術(ファーウェイ)などのモバイル企業から自社を保護するために不可欠な特許も、この買収によって手に入れることになります。
AppleがIntelの5G技術を買収することで、自社のスマホを高速な5Gワイヤレスネットワークに接続するためのチップを開発する取り組みを一気に加速することに繋がる可能性を期待しています。