NHKのインターネット同時配信を可能にする改正放送法が、5月29日の参議院本会議で成立しました。これによってNHKの番組がリアルタイムに同時配信されPCやスマホでも視聴可能になります。NHKはインターネットを含む多用な伝送路で公共的価値の実現を目指します。
NHKのテレビ番組を放送と同時にインターネットに流す常時同時配信を可能にする改正放送法が、5月29日の参院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。
NHKは2019年度中にサービスを始める方針で、これによってPCやスマホでNHKの番組をリアルタイムで視聴することが可能となります。
NHKでは現在、災害や大きなニュースに関する番組に限ってインターネット同時配信を行っています。改正放送法が施行されると、地上波の「総合」と「Eテレ」の番組を放送と同時にインターネット配信できるようになります。
NHKと受信料契約を結ぶ人は、追加負担なしにインターネットでリアルタイムに番組を視聴できるようになります。インターネット同時配信は、遅くとも東京五輪の聖火リレーが始まる来年3月に間に合わせる考えとされています。
NHKのネット事業の拡大については、日本民間放送連盟(民放連)などは「民業圧迫」だとして反発してきました。
NHKはネット事業の費用の上限を受信料収入の2.5%と定めていて、民放連はインターネット常時同時配信が本格化する20年以降も上限を維持することを求めています。ただこれに対しNHKは「適正な上限を設け、抑制的な管理に努める」として明言していません。
改正放送法では、ネット事業の費用などを毎年度公表することを義務化し、費用の上限などを定めた「実施基準」を放送行政を所轄する総務相が認可しました。そしてその基準が守られない場合には総務相が勧告する権限を付与しました。
ネット上では一部、「ネット環境があるだけで受信料を請求される」などの情報が飛び交っていますが、総務省の担当者は、「改正法が成立しても、ネット端末は(受信契約の)対象にならない」と否定しています。
放送法64条1項は、NHKの「放送を受信することのできる」設備があれば、受信契約を結ばなければならないとしていますが、PCやスマホなどインターネットにつながる端末を持っているだけでは対象にはならないと言います。
NHKでは受信料の義務化は行わず、NHK契約と照合してすでに受信契約を結んでいるユーザーは認証を経て追加料金なくネットでの放送を視聴できる仕組みが作られるようです。
また契約のないユーザーには放送の上にメッセージを表示させるなどして、受信料を負担するユーザーとの差別化を図るとされています。さらにネット契約に特化した新たな受信料を新設する可能性も報じられています。
NHKを巡っては、ワンセグ機能付きのカーナビさえも受信設備としてNHK受信料の負担義務を認める最高裁判決が波紋を呼んだばかりです。このような理由から今後NHKがネットからも受信料を徴収したいと主張する可能性も考えられます。
この点に関しては受信料制度の趣旨や民業圧迫にならないかなどの観点から慎重に検討される必要があるでしょう。
スマホやPCの普及でテレビ離れが進む中、NHKは経営計画で「多用な伝送路で公共的な価値をめざす」として、インターネットにおける取り組みを強化しています。インターネットおいても「放送法」が適応されるのか今後も注目されます。