韓国サムスン電子と米AMDは複数年に及ぶ戦略的パートナーシップを提携したことを発表しました。この提携によりAMDのRDNAグラフィックスの特許をサムスンが使用できるようになり、サムスンとAMDが共同でモバイル向けのGPU技術の開発を進めていきます。
米AMDは現地時間6月3日、韓国サムスン電子と複数年に及ぶ戦略的パートナーシップを締結したことを発表しました。この提携によって、AMDのRDNA(Radeon DNA)グラフィックスの特許をサムスンが使用できるようになります。
AMDとサムスンは、AMDが創り上げてきたRDNAグラフィックスの技術とノウハウを活かし、共同でモバイルフォン向けのグラフィックス技術の開発を進めていくということです。
AMDはPC向けGPUで世界シェアトップ2社の一角で、ゲーム専用機やクラウドプラットフォーム向けの製品も展開しています。
ただ一方で、モバイル向けの製品では2009年にクアルコムにImageonプロセッサ事業を売却して以来、AMDの製品ラインナップでは空白となっています。AMDにとってサムスンとの提携により、モバイル領域での空白を補完することになるでしょう。
5月末に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2019」で、AMDは次世代GPUマイクロアーキテクチャ「RDNA(Radeon DNA)」を発表しています。
具体的には、スケーラビリティの高い「RDNAグラフィックアーキテクチャ」をベースにスマートフォンなどのモバイルデバイスやその他のAMD製品を補完するため、サムスンにカスタムグラフィックスIPをライセンス供与する予定であるとしています。
技術供与の対価として、サムスンはAMDに対し技術ライセンス使用料を支払います。Bloombergによると、この対価は数億ドル相当となる見込みです。
RDNAアーキテクチャの詳細は明らかにされていませんが、従来比で1クロックあたり25%、消費電力1Wあたり50%の高速化を図ったとしています。
RDNAアーキテクチャは「超低消費電力でハイパフォーマンス」という特徴ですが、そもそも15W〜65W電源で動作するPC向けに設計されている技術です。
モバイル向けに展開するには、消費電力を5W以下に抑えつつも、高いパフォーマンスを維持する必要があります。
一方サムスンはモバイル向けチップセット(SoC)としてExynosシリーズを設計・開発しています。従来はイギリスArmのMail GPUを採用していましたが、このライセンス供与よってこのチップセットに今後はRDNAベースのGPUが搭載されるものとみられます。
Exynosシリーズの競合製品となるクアルコムのSnapdragonシリーズには「Adreno」というGPUが組み込まれています。このAdrenoはAMDが売却したImagenプロセッサを発展させたもので、Adrenoの名称はAMDの「Radeon」のアナグラムとなっています。
AMDにとっては、サムスンとの提携によってモバイルチップセット市場に10年ぶりに再参入する格好となり、かつての売却した事業と競合することになるでしょう。
AMDのLisa Su CEOは今回のパートナーシップについて、RDNAグラフィックスのモバイル市場への展開を拡大し、Radeonのユーザーベースと開発エコシステムの大幅拡大を期待できるものであるとコメントしています。